臨床に関するユーザーズガイド(Clinical Users Guide)


PWAは19世紀の反応時間の遅い機械的な記録から、末梢血管脈および中心脈プロファイルを記録する今日のデジタルで、高度に正確で非侵略的な方法へと急速な変遷を遂げました。イノベーションが起こり続けましたが目的としたのは測定、定量化、そして情報の共有でした。以下のガイドは脈波分析の開発と臨床応用を概説しております。

ここでの情報は今日の世界規模の経験に基づいており、大血管、高血圧、心臓等の問題を管理する技術を用いる方法を議論します。

心不全(Heart Failure)


心不全は先進国の成人の1番の死亡原因であり、発生と有病率が増加している唯一の心血管系疾患です。米国での入院する患者の年齢層が高齢者なので、一般的には高齢者の疾患であると考えられています。

心臓が十分な血液を代謝組織に供給出来ない場合とか、または拡張末期容量および/または血圧が高値の時だけ血液を供給する場合に心不全を発症します。この症状は心室機能不全と呼ばれ、収縮期および拡張期の2つのタイプがあります。

収縮期心不全

収縮期心不全は一回拍出量の減少に繋がる心筋収縮性障害が起こることを特徴とします。収縮期心機能障害を発症すると、心室排出および心室拡張が十分になされません。

心臓に与える動脈硬化の影響を示すPWVシステムを使うことで、大動脈および全身性の硬化を専門医は測定することが出来ます。これらの測定で高血圧などの疾患状態の迅速かつ有効な管理が出来ます。また、測定により拡張期心不全に病状が進行する前に早期の介入が可能になります。

拡張期心不全

拡張期心不全は、心室の弛緩障害および心室充満抵抗の上昇を特徴とします。この弛緩の遅れと硬化度の上昇が拡張期に心臓が正しく充満することを妨げますが、このことは特に、心拍数が高い時に顕著になります。拡張期心不全を発症すると、主要な弁膜疾患がなければ左室駆出率は0.50以上です。この症状は虚血があれば悪化します。

大動脈硬化度の上昇が拡張期機能障害の原因である可能性が有ります。その結果、運動許容度が下がり最終的には拡張期心不全になります。フラミンガム試験からのデータも一致し、心不全を発症した91%の患者は、その以前に高血圧に苦しんだ経験があり、それは動脈硬化による脈圧の上昇によつて特徴づけられます。

拡張期機能障害が左心室の弛緩障害により特徴づけられますが、収縮期の延長に起因する全収縮期時間の増加も同時に起こります。逆に、収縮期心不全を起こすと全収縮期時間が減少します。この時間の変化は拡張期心不全を収縮期不全から区別して同定する実際的な指標になります。

左心室拡張期不全に寄与する因子は動脈硬化、高血圧、虚血、糖尿病、肥大を伴ったり,伴わなかったりしながらの心筋変化などを含みます。大動脈硬化度の上昇により動脈と左室収縮期圧の上昇、心筋酸素需要の増大、LV肥大、冠灌流不全、大動脈圧の減少などの症状が現れます。

収縮期および拡張期心不全の治療計画は患者により相違するので、2つの不全を区別するのは重要ですが臨床的特徴のみで計画を達成することはできません。PWVシステムは心周期タイミングの分析を通してこの異なる治療計画を可能にします。PWVシステムは大動脈波形を分析し、かつ、左心室負荷、冠動脈灌流圧、中心圧の測定値を提供します。治療の目的は運動許容度の向上と症状軽減ですので、PWVシステムは専門医に治療計画の監視と管理に必要な測定値を提供します。

腎疾患(Renal Disease)


慢性腎臓疾患(CKD)または慢性腎不全(CRI)は腎機能が失われた結果です。疾患の進行に伴ってCKDの患者の多くは永久的腎不全または末期腎不全(ESRD)を発症することがあります。疾患の後期においては透析と移植のみが残された治療法の選択肢になります。この予後分析に加えて、腎疾患の患者は致死的な脳卒中または心臓発作の危険が高いことが観察されています。心血管系疾患の発症と関連している大血管疾患の進行を示して追跡するので、PWVシステムはさまざまな患者にとって貴重なものです。そのため、リスクの高い患者の早期検出および病気の管理のためには重要なツールです。

腎疾患-事実

心血管系疾患が慢性腎臓疾患(CKD)および末期腎不全(ESRD)を起している患者の主要死亡原因であるという研究報告がされています。CVの予防および/または治療がこれらの患者の重要な目標ということになります。

• 米国では700万人以上の成人がCKDの生理学的な徴候を示しています。
• これら700万人のうち、30万人以上がESRDの治療を受けています(2001年)。
• 毎年、約10万人がESRDと新たに診断されています。
• 糖尿病と高血圧がESRDの最も一般的な原因です。1年目の77%から10年目の9%まで。
• CKDの患者はCKDでない患者と比べて、3~30倍の高さで致死的な心血管系疾患になります。
• より多くのCKD患者が心血管系の問題で死亡します。
• 疾患がESRDとなる前に、80%のCKD患者は心血管系疾患で早死します。

動脈硬化

CKDおよびESRDを起している患者の心血管系疾患による高いリスクは高血圧、高コレステロール、糖尿病、 低い活動レベルなどの他の心血管系危険因子などの強い存在に一部が起因している可能性が有ります。しかしながら、これらの因子のみでESRD患者の高い死亡率を完全に説明できるものではありません。

血液透析患者における心血管死の最強の予測因子は、大動脈の構造と機能です。動脈硬化度が上昇すると、中心収縮期血圧が上昇して心仕事量が増加します。動脈硬化が心臓の血圧プロフィールを変化させ、これにより高血圧、左室肥大と機能不全、心筋潅流などの疾患状態を発症し、その後、悪化します。これらの因子の全てがCKDおよびESRD患者に認められ、さらに、PWVシステムは動脈圧プロファイル分析および脈波伝播速度モジュールを用いて患者評価をします。

大動脈の脈波伝播速度(PWV)および、より重要である増大係数(AIx)は血液透析中のESRD患者の有病率の予測因子として知られています。これらの測定値は、他の知られている危険因子から独立している死亡とリスクに関する情報を提供します。ESRD患者の試験群においてAIx (%)の上昇が10の場合、心血管系のリスクおよび全原因死亡率が5%上昇します。加えて、PWVの1 m/s増加ごとに、その後の補正全死亡率が39%増加することが示されました。この患者群の特徴は26±15の範囲のAIxおよび11.7±3.0 m/sの範囲のPWVを含みます。これらの所見はすべて、上腕血圧を含めた他の知られている危険因子から独立しています。

ESRDにおける動脈硬化は血管石灰化に広く起因しているという研究報告がされています。また、血管石灰化の存在と透析患者における動脈硬化度の上昇の間に繋がりが発見されています。更には、大動脈PWVが上昇すると冠動脈石灰化の程度も上昇します。ESRD患者に動脈硬化症が発症する場合に石灰化は予防可能な因子であるかもしれないので、この所見は重要です。

透析を受けている小児の動脈壁に大きな異常を示し、後に硬化した太い動脈になるという最近の研究報告がされています。この所見はAIXとPWVの増加によって示されますが、心血管系のリスクの評価と監視をするための小児腎臓病におけるマーカーの重要性を表しています。

大動脈硬化度の上昇(PWV)および全身性の動脈硬化(大動脈増大係数 - AIx)がCKD、高血圧、糖尿病、アテローム性動脈硬化、高コレステロール血症の患者によく見られる他の疾患状態と相関関係が有ることがすでに示されていますが、動脈硬化とCKD患者の心血管系の高い死亡率とを繋ぐ資料は多くありません。動脈硬化が軽度の腎障害を発症した透析導入前CKD患者に関連していると最近の試験で示されています。同様に、糸球体濾過量の減少で明らかになったように、動脈硬化度の上昇が腎機能の低下の関連していると示されています。

腎臓病と高血圧症患者に与える薬剤、塩、水分過剰摂取、腎移植、運動などの種々の因子の作用が検査で多く示されています。実際、PWVシステムは腎臓病の患者における内皮機能に与える透析の影響を分析するのに使用されています。これらの応用と繋がりは中央血圧、大動脈および全身性の動脈硬化、内皮機能の変化を用いて治療と治療計画の効果を表すPWVの可能性を強調するものです。

PWVシステムは肝臓病のあらゆる段階に有る患者ついて、検出と治療管理の両方で重要な役割を果たす可能性を示しています。

心血管系のリスク(Cardiovascular Risk)


動脈硬化、および心臓圧の上昇に繋がる加速波反射は、高血圧や肥満などのその他多くの心血管系の病気の危険因子に繋がっています。より重要なことは、中心収縮期血圧と動脈硬化が心血管系の有病率および通常の危険因子、または上腕収縮期血圧などの別の因子とは無関係な死亡の予測因子であるという研究報告です。

PWVシステムが計測する全身性および大動脈硬化度の測定値(大動脈増大係数および脈波伝播速度)は、心血管系のリスクの高い発生率の疾患状態に繋がっています。また、これらのパラメータは末期腎不全の患者の全原因および心血管系の死亡に独立して関連しています。また、高血圧症および糖尿病患者においては、AIxとPWVは冠動脈疾患ならびに心血管系の有病率/死亡率の重要な予測因子であることが示されています。

動脈硬化により、冠動脈灌流圧の低下とともに心筋の要求量と中心収縮期血圧が上昇することが調査で分かっています。このような生理学的発現が心臓発作、脳卒中、心不全のリスクを劇的に増加させます。PWVシステムは心臓の血圧プロファイルの分析、ならびに、動脈の構造と機能を評価することで整合性のある情報に基づくリスク評価を容易にしてします。

動脈硬化に関連する因子

年齢、身長および性別

老化が心血管系のイベントの重要な決定要素であることは広く認識されています。動脈が老化していくと、ますます硬化して拡張します。この構造変化により収縮期血圧と脈圧が上昇し、最終的には高血圧に、特に孤立性 収縮期高血圧(高齢者に最も多い症状)に繋がります。

動脈硬化(大動脈PWVおよびAIx)と老化との間に正相関が有るという研究報告があります。この関係は中央圧脈拍(PP)および増大圧(AP)にも存在しますが、AIxとPWVは前者に比べて異なるパターンを示します。中央PPとAPは老化と伴に直線的に増加しますが、AIxの変化は50歳未満の人により顕著でありPWVの変化は50歳を超える人により有意に起こります。動脈硬化度の上昇は増大圧と収縮期血圧の上昇に繋がるので、動脈健康に与える老化の影響を十分に評価するにはPWVとPWA測定をすることが推奨されています。PWVシステムは、患者を正常な年齢および性別を考慮した測定値と照合するような基準範囲を含みます。

身長は心血管系疾患を発症するリスクであると認められています。低身長の人は圧力波が伝播する経路長が短く、心周期において反射波が速く戻ってきます。これは収縮期圧とLV後負荷を上昇させます。

女性は男性と比べて高い動脈硬化の傾向を示します。女性は男性と比べて、一般的に低身長であるので、この性差の根本原因が身長であると一部の研究が示唆しています。しかしながら、この身長の因子を補正しても、性別は依然として動脈硬化を予測する役割をはたします。

喫煙

喫煙は中央血圧、内皮機能、血管収縮に即時的影響を与えます。そのために、若い人々にとっても、喫煙は心血管系疾患を発症する重大な危険因子です。性別、身長、健康または体力度にかかわらず、喫煙者のAIx測定値は飛躍的に高くなります。たまに吸う人でもこれらの値の平均以上を示し、慢性的な喫煙とまではいかないにしても、間接タバコ煙は動脈硬化に対して僅かに少ない程度の悪影響があります。

ここで、気に留めておくべき大切なことは、有意に高いAIx測定値であっても、上腕血圧の測定値は脈圧増加が上手くできないで慢性的な喫煙者で低い傾向があるので健康全般について正しく伝えていません。PWVシステムを使うことで大動脈圧と動脈硬化についての洞察を得ることが出来ます。

肥満

小児と成人の肥満の発生率および有病率は世界の課題として急激に進行しています。米国の場合、60%を超える成人は太り過ぎであり、肥満の小児および青年の数は急速に上昇しています。糖尿病、高血圧、睡眠時無呼吸症などの他の疾患状態との関係に加えて、肥満と心血管系疾患との繋がりは十分に確立しています。最近では、肥満はAIxの重要な因子である中央部肥満になっている動脈硬化にも繋がりがあると指摘されています。この関係性は老化または血圧などの他の健康因子とは無関係です。このことは動脈硬化を分析する場合は体重よりも体脂肪分布を考慮すべきであることを推奨しています。

動脈硬化に加えて、肥満と大動脈PWVとの関係性が存在すると報告されています。最近の報告では、肥満の人は大動脈PWVの中央測定値が正常な体重の範囲にある人と比べて4~9m/sほど高いと報告されています。また、PWVは肥満と内皮機能障害の独立した関係を示しました。体重が減少すると、血管内皮機能に顕著な改善が認められました。

肥満患者に処方される主要なライフスタイルの変更は運動を増やすことです。運動をすることで、座っていることが多い人、さらには冠動脈疾患または末期腎不全の患者のいずれにおいても動脈硬化度が低下することが報告されています。運度の効果は非常に影響が大きいのです。運動が動脈硬化を改善し、心筋虚血の可能性を減少させます。加えて、加齢性の動脈硬化の自然な進行を変える可能性を示しています。運動選手を研究した報告によると、座っていることが多い人に比べて動脈硬化度は低いのです。この違いは定期的な運動に起因しています。

コレステロール

高血中コレステロール値、中心動脈における脈圧、全身性の動脈および大動脈硬化の間の関係性は存在することが報告されています。末梢血圧が低い場合でも、この関係性は顕著です。この関係性に加えて、LDLコレステロールは動脈硬化の独立した決定要素です(AIx上昇で示される)。

コレステロール値を低下させると動脈硬化度が低下し、更には、心血管系および全原因死亡率が低下することが分かっています。脂質低下に関する周知のメリットに加えて動脈硬化に効果があるのかどうかを測定するために、スタチン系薬剤を処方して大動脈PWVを低下させますが、脈波分析をSEARCH(コレステロールとホモシステインをより低下させることによる有益性に関する試験)試験で現在使用しています。

ダイエット

健康な食事は健康に密接に関連しますが、摂取された物質による生理学的効果を理解することがキーポイントになります。幾つかの食物と飲料による心血管系に与える影響、動脈硬化の悪化、または心血管系のリスクが考えられます。以下の食料品は動脈硬化と中央血圧に著しい影響があることが報告されています。

カフェイン

カフェインは世界中で最も広く使われ、社会的に認められた薬理学的な物質です。コーヒーを摂取すると中央血圧を上昇させますが、カフェイン抜きのコーヒーにはこのような効果がないのでカフェインは有効成分であるという研究報告があります。上腕血圧を上昇させることなく、中心収縮期血圧、AP、AIxとコーヒーの消費との間には即時的で顕著な関係が存在します。

高血圧症患者ではカフェインの悪影響が進行すると、3時間継続する大動脈硬化が起こります。硬化した大動脈がある患者の場合、抗高血圧薬物からの保護が殆どなく、カフェインはさらに悪化させます。

カフェインの使用は動脈硬化に悪影響を与えるので、結果として左心室負荷に悪影響を与えます。カフェインの周知の効果に喫煙と合わさることで、動脈硬化に相乗的な効果を与えます。これらの理由から、心血管系のリスクを評価する場合にはカフェインを考慮するべきであると示唆されています。

アルコール

アルコール消費と心血管系のリスクの間の関係はU字形、つまり、飲酒量が多い人と飲酒しない人はリスクが高く、適度な飲酒をする人が中央にあって低いリスクになります。これと同じ関係性がアルコールの消費と動脈硬化との間に存在します。例えば、赤ワインを適度に消費する冠動脈心疾患の患者では中心収縮期血圧と波反射に好ましい効果がありますが、上腕血圧には変化がありません。ここで気に留めておくべき興味深いことは、ノンアルコールの赤ワインでも同様の結果が認められることです。それゆえ、種々の物質の潜在的リスクを評価する一方で、試験により従来の血圧と比べて中央血圧を測定する必要性が示されました。

ダークチョコレート

ダークチョコレートは心血管系に良いと言われているフラボノイドと呼ばれる抗酸化物質を含みます。動脈硬化および波反射(AIx)を低下させるためには、フラボノイドを多く含む食物を取ることが推奨されています。ダークチョコレートは内皮機能にも良い効果を与えることが認められています。これらのメリットは全体的に、ダークチョコレートの心血管系に与える良い影響を示唆しています。

妊娠(PREGNANCY)


女性は、心血管系の変化も含めて数多くの身体的変化が妊娠によって起こります。妊娠中は高血圧になることは珍しくなく、このような状態がある場合は、子癇を発症すると母親と小児の重大な合併症の原因になる可能性があります。

妊娠中に高血圧になると、以下の2つの形態をとる可能性が有ります。
1. 慢性:妊娠前または妊娠20週前に、このタイプの高血圧を発症し子癇になることがあります。
2. 妊娠後:妊娠20週後に、このタイプの高血圧を発症しタンパク尿、多臓器不全(子癇前症)およびてんかん発作(子癇)になることがあります。

妊娠した患者に既往の高血圧がある場合は、子癇前症さらには胎盤剥離および発育遅延などの他の問題がでるリスクが2倍になります。高血圧が重症になると、子癇のリスクが46%増大し、さらには、母体および胎児の合併症の可能性が上昇します。

有病率と生存率

ある研究によると、再発性の発作または頭蓋内出血および腎不全が原因の永続的なCNS損傷により、世界中で50,000を超える女性が子癇前症および母体の罹病により毎年死亡していることが報告されています。米国と英国では約5%の妊娠は子癇前症を合併し、この5%のうち、1~2%は子癇を発症しています。子癇前症の割合は社会経済的な地位の低い女性、年齢が極端に高い女性、初めての妊娠を経験する女性の間ではさらに上昇しています。胎児へのリスクとしては、未熟児分娩、胎盤梗塞、子宮内発育遅延、胎盤早期剥離、胎児低酸素症が有ります。

子癇前症は予防できませんが死亡は早期診断、モニタリング、治療をすることで回避できます。高血圧は子癇前症の重要な予測因子であり、妊婦の疾患状態を評価することで早期診断が可能になります。250,000を超す女性を対象にした試験では、妊娠高血圧の女性は子癇前症を発症するリスクが30%以上高く、高血圧でない女性と比べて既存の子癇前症がある女性は、死亡または重篤な疾患になるリスクが400%という膨大に高い率になることが報告されました。これらの妊娠に係る事項に加えて、高血圧でない女性の赤ちゃんに比べて高血圧の女性の赤ちゃんは副作用を受けやすくなります。

現在、上腕血圧の測定は妊娠中に妊婦を評価する標準的な指標になっています。このタイプの指標では種々のタイプの高血圧を区別するのに十分に高感度でないだけでなく、子癇前症を発症するリスクのある患者を発見することも出来ません。リスクのある患者を発見し、高血圧性の障害を区別することが必要である理由は、このような問題を管理し母親と小児の予後を改善することが明らかに重要だからです。

動脈硬化

動脈硬化が高血圧の主要原因であるという研究報告がされています。近年、研究者は動脈硬化と妊婦の心血管系合併症との間の関係性を調べています。健常な女性における妊娠における典型的な心血管反応は、心拍出量増大、(末梢血管の拡張による)上腕血圧低下、血液量の増量、内皮一酸化窒素放出の増大です。さらに一般的に、妊婦でない女性と比べて、各妊娠期の間は大動脈AIxは低い値です。

動脈硬化は動脈において反射圧力波の早発の還流の原因になります。PWVシステムは大動脈脈波伝播速度(PWV)および大動脈増大係数(AIx)の上昇を観察することで動脈硬化度の上昇を測定します。PWVシステムはAIxの変化を測定することで、大動脈AIxに示される変化が正常なものか、懸念要因なのかについての重要な洞察を与えます。

高血圧でない妊婦と比べて、妊娠高血圧の女性は第3妊娠期で大動脈AIxの値が高い傾向が有り、これらの値は子癇前症の女性で高くなります。出産から6週間で大動脈AIxは正常の、妊娠していない時の値まで低下します。同様に、妊娠高血圧と子癇前症があると大動脈硬化度は上昇することが研究で報告されています。そのために、PWVシステムによるAIxおよび大動脈PWVの測定値は、妊娠高血圧の女性と子癇前症に進行するリスクのある女性を区別するのに重要です。

血圧正常者妊娠の場合であっても、低い出生率と母体の大動脈PWVとが相関することが発見されています。1 m/sの大動脈PWV測定値は、17%の出生時体重の百分位点の減少と関連します。出生時体重の百分位点は妊娠の転帰についての重要な指標であり、出生前評価における予想される胎児の問題について洞察を与えます。血圧正常者妊娠の場合であっても、動脈硬化は血漿量増加が不良であることの反映として現れることがあり、胎児発育を阻害することもあります。

妊娠高血圧と子癇前症とを発見し区別する指標をPWVシステムで容易に計測出来ます。これらの重要な分析に加えて、PWVシステムは妊娠関連の血管の変化に対して患者が対応する能力についての貴重な洞察を与えます。これらの測定値により、医師は健康についての幅広い評価が可能になり、妊娠中のより良いリスク管理とモニタリングが出来るようになります。

糖尿病(Diabetes Mellitus)


心疾患は成人の死亡理由の第1位であり、この発症を起こす因子を管理することは重要です。糖尿病の中で、特に2型糖尿病は、高血圧や高コレステロールなどの関連する危険因子により心疾患および脳卒中のリスクを上昇させます。糖尿病の長期合併症は非常に影響力が大きく、体の多くの部分に影響を与えます。これらの問題は神経障害、失明、腎不全、脳卒中、心臓および血管疾患を含みます。大血管疾患の早期発見と症状管理は糖尿病患者にとって欠かせないものです。PWVシステムはリスクの評価を行い、非侵略的で使いやすいアプリケーションで心疾患系合併症の進行の追跡に役立ちます。

有病率と生存率

糖尿病は米国だけでも20百万を超える人に影響を与えていると言われています。この20百万のうち、14百万人が糖尿病と診断され、残りの6百万人が糖尿病を抱えながら生活していますが、まだ診断されていません。20歳を過ぎた約1百万人が、毎年糖尿病と診断されています。心疾患を発症した糖尿病の生存率は40%で、このリスクは2型糖尿病の患者では2~7倍高くなります。糖尿病と心血管系疾患との関係については多くの報告があります。また、糖尿病は、心血管系疾患に繋がる疾患状態と言える末期腎不全の主要原因の1つであると示されています。

動脈硬化

糖尿病と高いリスクの心血管系のイベントとの間の関係性については、一部は、糖尿病と関係する他の周知の危険因子(例えば、高血圧、異脂血症、高血糖症、肥満)に起因していることもありあます。そうは言っても、これらの因子は関係を完全に説明する事は出来ません。その理由はリスク上昇のいくつかはこれらの問題に関係がなく、糖尿病の型で変化するからです。

明らかなことは、動脈硬化度の上昇は1型と2型糖尿病の両方に関連しており、また、高い死亡率の原因であることも考えられます。PWVシステムは動脈硬化についての洞察を与え、糖尿病の心血管系のリスクを評価するための貴重なツールです。PWVシステム測定のパラメータは末梢脈圧と大動脈硬化を含みます。

末梢脈圧は動脈硬化の評価を支援し、糖尿病に相関することが示されています。加齢性の血圧の上昇は1型糖尿病で15~20年進行するという研究報告がされています。この所見は血管老化の加速が心血管系の病気を予兆であることを示唆しています。

PWVシステムにより得た脈波伝播速度は大動脈硬化を測定し、このパラメータは糖尿病の人の死亡に関する独立した予測因子です。また、このパラメータはPWVのm/s上昇毎に死亡リスクの8%上昇を示します。大動脈PWV上昇と増大係数(AIx)は両方の糖尿病に関連しています。

FIELD (Fenofibrate Intervention and Event Lowering in Diabetes)試験で行った最近の評価では、増大圧(AP)、AIx、頸動脈IMT(2型糖尿病患者におけるアテローム性動脈硬化の既知の予測因子)の間の明らかな関係が示されました。この所見は動脈硬化が2型糖尿病におけるアテローム性動脈硬化を悪化させる役割を示唆しています。より重要なことは、この所見は中央血圧と動脈硬化の評価が従来の方法に比べて2型糖尿病における動脈肥厚の決定要素として使用できる優れた可能性を示唆している点です。これらの計測は糖尿病の心血管系のイベントに関連しているので、APとAIxの研究が進行して予測値について更なる洞察を与えることが期待されています。

また、APとAIxは糖尿病ならびに冠動脈疾患に苦しむに患者の頸動脈IMTとプラークスコアに有意に関連しています。加えて、アジア系インド人を対象に実施したCURES(チェンナイの都市および地方の疫学研究)試験は、網膜症を併発する2型糖尿病患者は併発していない患者と比べるとAIxとIMT値が高いことを報告しました。この最近の所見は、早期のアテローム性動脈硬化と糖尿病性網膜症との間に強い相関関係を示唆しています。

また、PWVシステムは糖尿病の子供におけるリスク評価と治療最適化の分野で大きな可能性を持っています。糖尿病がない子供と比較した場合、わずか10歳の1型糖尿病の子供が動脈硬化度の上昇(AIx)を示しました。PWVシステムから得られる動脈硬化の情報はリスク評価、治療改善、年を取ってから発生するかもしれない合併症管理に使用することが出来ます。

動脈硬化度の上昇は中心収縮期血圧を増加させ、そのことはさらに心筋の要求量を増大させると知られています。心仕事量の増加は心筋梗塞に直接関連しており、高血圧、左心室機能不全、心筋潅流の減少などの心臓血管関連の疾患状態を生じるかもしれません。このような状態の発症と悪化は、正しい発見とモニタリングで回避可能です。PWVシステムは動脈硬化、AIx、PWV などのパラメータを評価するために、脈波分析および脈波伝播速度の測定を用います。この情報を簡単、非侵略的な方法で計測しますが、既存の疾患状態の評価と将来の治療プログラムの処方において計測されたデータは非常に価値の有るものです。

個別化薬物治療プログラムが、糖尿病を含めた心血管系疾患の患者の動脈硬化度を低下させることが報告されています。これらの時宜を得た薬理学的な介入がカフを用いた血圧の変化に関係なく有効であることが示されています。インシュリンが末梢血管抵抗に関係なくAIxを低下させることが示されていますが、一方で、この効果はインスリン抵抗性を伴う糖尿病(1型または2型)または肥満患者では認められません。動脈硬化度を低下させることが証明されている薬理学的な介入には、4週間のアスコルビン酸の経口投与が含まれます。PWVシステムでは、医師は中央心臓パラメータの変化を測定することで、特定の投薬計画の有効性をモニタリングすることが出来ます。このアプリケーションを使うことで、医師が行う信頼性のある患者リスク評価、さらには治療の追跡と患者の健康管理のための正確な測定を確実に実施することが出来ます。

末梢動脈疾患(Peripheral Arterial Disease)


末梢動脈疾患とは何か(What Is Peripheral Arterial Disease?)


プラークと呼ばれる脂肪性物質が蓄積することによって動脈が狭くなる場合があります。動脈壁を被うプラークが蓄積し、硬化するにつれて、動脈の開口部が狭くなるか閉塞を起します。このプロセスを狭窄と呼びます。狭窄が下肢に発生する場合を下肢末梢動脈疾患と呼び、痛み、治癒の遅延、場合によっては壊死の原因になります。このような疾患状態である35%のアメリカ人 がアテローム性動脈硬化である1症例です。これ以外でのアテローム性動脈硬化の発症は、心臓疾患や頸動脈疾患などのその他の心血管系の問題が含まれます。

末梢動脈疾患の危険因子および症状(What Are The Risk Factors And Symptoms For Peripheral Arterial Disease?)


下肢動脈疾患を発症する最も重大な危険因子は喫煙です。実際、喫煙はあらゆる心血管系疾患にとって主要な危険因子です。それ以外の因子としてアテローム性動脈硬化、糖尿病、高血圧および高コレステロールの家族歴、座っていることが多いライフスタイル、および老化が挙げられます。

末梢動脈疾患の症状には以下のようなものがあります。

• 跛行につながる恐れがある下肢(つまり、ふくらはぎ又は太腿)の筋痙攣。
• 安静時の下肢の痺れ、衰弱、痛み、または冷感。
• 下肢の創傷の治癒の遅延。
• 血液供給に障害が生じた際に発症する痛みまたは潰瘍(未治療の場合、壊疽になる可能性がある)。
• 閉塞した動脈の近傍での踵または皮膚の黒ずみ、黒変。

医師は磁気共鳴画像診断法(MRI)または血管造影法などの画像検査を使用して、動脈狭窄の位置と程度を測定します。足関節の血圧値を上腕の血圧値と比較して、狭窄の重症度と血流の減少を測定します。この検査は足関節上腕血圧比(ABI)と呼ばれます。

末梢動脈疾患に対する治療法について(What Are The Treatments For Peripheral Arterial Disease?)


末梢動脈疾患を発症した患者に対して選択できる治療法は疾患の重症度によって異なります。症状が軽度から中程度の場合は、禁煙して運動を増やす等のライフスタイルの変更で十分に症状が改善することが少なくありません。また、高血圧、高コレステロールおよび糖尿病などの関連する疾患状態の補助のために医師は抗凝血剤の治療、またはその他の薬剤を処方します。

疾患がより進行した段階では、バルーン血管形成術またはステントなどのより侵襲的な処置をすることで血液供給を物理的に改善させて動脈の開口部を拡張します。これらの治療法は動脈の罹患部が比較的小さく容易に接近できる場合に施されます。当初は有効であっても血管形成術またはステント留置術の処置を受けた患者の約30~40%は1、2年で閉塞が再発します。この閉塞の再発は再狭窄と呼ばれます。

•血管造影図
この画像診断検査によって医師は血管の状態を知る手掛かりが得られます。動脈に実施された血管造影図は動脈造影図と呼ばれ、静脈に実施された場合は静脈造影図と呼ばれます。いずれの場合もカテーテルと呼ばれる柔軟性のある中空管を使用して染料を血管に注入します。カテーテルは鼠径部の針穿刺を通して染料を投与します。この染料は血管をX線によって可視化するので閉塞、血栓、肥大およびその他の異常の表示、診断が容易になります。医師は血管造影図をバルーン血管形成術、ステント留置術、アテローム切除術、低温形成術、またはレーザー療法などのいずれかの治療法と組み合わせることができます。

•バルーン血管形成術
カテーテルの先端に特殊なバルーンを付けて鼠径部の血管に挿入します。カテーテルが動脈の患部に誘導されるとバルーンが膨張します。この膨張によってプラークが動脈壁に圧迫され、その結果、閉塞が軽減され動脈が拡張します

•ステント留置術
閉塞の範囲次第では、より恒久的な解決策が処方されます。そのような状況では、動脈の開口部を補強するためにステントと呼ばれる網目状の小さなサポートチューブを使用します。ステントの挿入には先端にバルーンが付いたカテーテルを使用します。バルーンが膨張するとステントは動脈内に残って血流を確保し、新たに拡張された開口部を維持します。場合によっては瘢痕組織の形成を防ぐためにステントに薬剤を塗布する場合があります。

•アテローム切除術
アテローム切除術は動脈壁を被うプラークを除去するために血管形成術と併用して施します。アテローム切除術用デバイスはカテーテルを使用して動脈に挿入します。動脈閉塞の部位で回転するブレードまたはバーが作動し、硬化したプラークを内壁から粉砕します。その後、カテーテルは身体から弛んだプラークを吸引します。

•低温形成術
バルーン血管形成術を実施して動脈壁を拡張します。その後、閉塞部位で凍結化合物を使用します。凍結することによってプラークは凝固し、より小さく、均等な破片に粉砕されます。このプロセスにより、狭窄を回避します。

•レーザー
カテーテルは先端に特殊なレーザーを備えて動脈に挿入されます。閉塞点でパルスレーザービームを照射してプラークを蒸散します。

•下肢バイパス
重症の動脈疾患の場合は下肢バイパス手術が推奨されます。バイパスでは新しい血管を下肢に再構築し血流改善、創傷治癒の促進、および下肢の関連する痛みの緩和を図ります。

生理現象の動脈拍動への影響(Effects Of Physiological Phenomena On The Arterial Pulse)


成長と発達(Growth And Development)


小児の動脈拍動は中心動脈と末梢動脈で同じ輪郭を示します。また、この所見は高齢者で観察される結果に類似しています。小児の動脈拍動は振幅が低い一方、拡張期の第二波は表示されずに、波のピークは収縮後期と初期に認められます。被験者が青春期になると動脈で観察される輪郭は変化が現れます。末梢脈拍が増幅され、波のピークが初期収縮期にシフトして第二拡張期波が初期拡張期に明らかになってきます。圧力波のこのような変化が後期青春期と小児期における著しく高い末梢脈拍圧力および 収縮期圧力になります。

幼児と高齢者との間で圧脈波形が類似するのは、動脈の構造と波反射に与える効果に原因があると考えられます。幼児の場合、幼少期には大動脈の対応力が非常に高くても幼児の身体が相対的に低いため、末梢血管から中心血管への反射波が短くなります。高齢者では身長は重要な因子ではありませんが、大動脈の硬さは反射波の速度に同じ効果を及ぼします。幼児は身長が低く、心拍数が早くても、比較的長いLV駆出期を示します。サイズおよび心拍数が類似する研究に使用された動物は著しく短い LV 駆出速度を示して、第二の反射波が拡張期と収縮期で認められます。

増加する大動脈圧波を生成するこの伝達機能は子供よりも大人で明らかになります。若い人の低い身長は波の伝搬および反射に著しく影響を及ぼします。圧脈波は上半身だけでなく、大半の反射の起源である下肢でも影響を受けます。

老化(Ageing)


Mahomedが最初に発見して以来、老化は動脈拍動の重要な因子であることが知られています。Kellyらは健常者の動脈拍動について広範囲な研究を実施しました。橈骨動脈と頸動脈との両方で収縮後期の圧力ピークの増加があると報告されています。この観察は二次拡張期圧力波の消失を伴います。さらに年齢を問わず、頸動脈よりも橈骨動脈で収縮後期圧力波がより低いことが判明しました。同様に心臓カテーテル法で得られた上行大動脈からの測定値は同じ脈波パターンを表示しますが、収縮後期の脈波増大は頸動脈でより大きく、橈骨動脈においてはさらに大きいことが明らかになりました。

脈波増大は最初の収縮期隆起後の収縮後期圧力の増圧として定義することができます。この測定値は脈圧を最初の収縮期隆起の圧力で割ることによって測定され、mmHg単位で表現されます。これは脈波増大を脈圧で割ることによっても測定できます。大動脈脈波の脈波増大は20mmHgまたは159%(あるいは脈圧の37%)として測定されます。

脈波増大は老化とともに拡大すると言われています。青春期には増大係数(AI)は約100%であり、その振幅は最初の収縮期隆起に近似する上行大動脈収縮期の圧力波の振幅です。この値は老化とともに増加し高齢者は約160%の増大係数(AI)を示し、橈骨神経の圧力波増大はほぼ100%、二次圧力波は青春期と比べて約40%上昇します。

一生を通じて増大係数(AI)が増加するこの傾向は動脈硬化、特に脈波伝播速度を増加させる大動脈の動脈硬化に直接関連しています。動脈硬化によって胴体および下半身からの反射の戻りが早くなります。この反射は抵抗の低い導管動脈が抵抗の高い細動脈と連結される場所であれば、体中どこでも発生します。この作用は健康な西洋人と健康な中国人の被験者で広範囲に研究されました。中国人はアテローム性動脈硬化症の発現が統計的に低い傾向があります。大動脈脈波の速度は 20 歳と 100 歳の間で 2 倍以上増加することが分かっているため、大動脈硬化のプロセスは老化の正常な反応であり、脈圧および収縮期圧力が増加するのはそのためです。このプロセスは高血圧および動脈の変性によって悪化し、動脈および心臓疾患によって修飾される場合があります。

体力(Physical Fitness)


老化による動脈拍動への悪影響は各種の動脈での脈拍の収縮期脈波増大の低下と組み合わさり、健康に有害と考えられます。運動は身体の全般的な内皮機能に影響を及ぼし導管動脈の拡張、波反射の減少、および脈波伝播速度の低下をもたらすことが報告されています。これらの効果は頸動脈、橈骨または大動脈の脈拍の脈波増大を低下させる可能性がありますが、この関係は実証されておらず観察された結果の主要メカニズムは究明されていません。また大動脈の老化が進んでいない被験者は老化が進行した被験者に比べて運動中により心地良く感じるため、運動に参加する可能性がより高くなります。

運動をする被験者の方が測定値の脈波増大がより低くなるのは、内皮機能が改善されることが原因である可能性がありますが、ただし、脈波輪郭と内皮機能障害との間の関係性は実証されていません。異なる疾患での老化に関して観察されるように、脈波伝播速度の変化と上肢の動脈硬化とは上肢の内皮機能障害には結びつきません。

食物(Food)


摂食すると(飲料を含む)内臓床からの波反射が減少するため、動脈波の輪郭、特に収縮後期の脈波増大の程度を変化させます。そのため、吸収後状態であることが老化、薬物効果の評価、または疾患一般の評価の実施に望ましい状態です。

心拍数(Heart Rate)


心室駆出のパターンおよび持続時間はいずれも心拍数によって影響を受けます。影響を受けると動脈圧力波の輪郭が変化し、かつ、心室駆出中に生成される反射波の和になります。心拍数が低下すると脈波増大が増加して(駆出期の増加を通じて)、心拍数が高くなると(駆出期が短縮化され)脈波増大が減少することが分かっています。Gallagher および Wilkinson らが広範囲に研究したように、この効果が原因で心臓ペーシング中に心拍数が10拍/分上昇毎に大動脈の脈波増大が約 4% 減少します。さらに5±6 Hz 付近の周波数において個別の高調波がより高く増幅されるため、心拍数が大動脈と末梢動脈の間の脈波の増幅を拡大させることが発見されています。さまざまな心拍数で末梢圧力波から上行大動脈を評価しながら、P WV システムの転送機能はこの発見を可能にします。

運動(Exercise)


運動は心拍数に明らかな効果を及ぼし、この効果が最も明白になるのは橈骨動脈の脈圧が上行大動脈の 2 倍にまで上昇し、橈骨収縮期の圧力が80mmHgより高く上昇する頻脈時です。ランニング時の垂直になっている身体的効果により、動脈拍動に追加された圧力波として現れることにあります。ただし訓練を受けた長距離ランナーの場合は対向拍動を経験する可能性があります。この場合、心拍数とストライドが同調し、垂直の作用によって拡張期に最も著しい増圧が起きます。この逆の場合は、この現象は拡張期血圧が低下して収縮期血圧が増圧して有害な効果になる可能性があります。

身長(Body Height)


脈波増大はすべての動脈に関して年齢に関係なく身長に大きく依存しています。低い身長は心血管系疾患の既知の予測因子であり、男女間の脈波増大における差異の主な理由は身長差です。身長が低いほど初期の波反射が起きます。結果として生じる LV 負荷の増加およびLV肥大を伴う大動脈の収縮期血圧増大がこのような効果を起す主なメカニズムである可能性があります。

性別(Gender)


脈波増大における性別による差異は主に男女間の身長差に起因します。エストロゲンは動脈硬化と脈拍輪郭の変化の一因ではありますが、主要因子と考えられているのは身長です。

疾患の影響(Effects Of Disease)


動脈硬化(Arteriosclerosis)


動脈拍動における最も重要な因子は老化です。反射波の初期の戻りが徐々に増加するにつれ時間とともにヒトの大動脈の脈波伝播速度は徐々に上昇します。これにより拡張期の第二波は収縮期に移動し、収縮後期の圧力の脈波増大が増加します。初期の波反射によって起こされた収縮後期血圧増大が原因で中心動脈の収縮期血圧は40±50mmHg程度増圧します。

大動脈硬化の原因は中膜内部で弾性ラメラが破砕および断片化することにあります。動脈壁のエラスチンから伸縮性が劣るコラーゲン領域にストレスが移ると、進行性の大動脈拡張が発生し硬化度が上昇します。この現象により、「中膜壊死」領域の大動脈および動脈の崩壊および拡張が起きます。この弾性動脈の内側要素の一般的な変性は動脈硬化と呼ばれるものです。この疾患は脈圧および収縮期血圧を漸進的に増加させ孤立性収縮期高血圧としても知られています。

高血圧(Hypertension)


収縮期高血圧は老化と同じ効果を圧力波の変化に及ぼす場合がありますが、ただし、加速された大動脈の変性はより年齢が若い時に起こります。高血圧のこの効果は大動脈の硬化の進行と脈波伝播速度の加速によって容易に説明されます。急性ですが可逆性です。動脈拍動におけるこの変化は、橈骨動脈における収縮期の第二の圧力波の振幅増加とともにMahomedによって動脈圧上昇の説得力のある証拠として報告されました。Mahomedは後にRiva-Rocciのカフ方式が登場するまでの 20 年以上にわたり臨床試験においてこの観察を用いました。

動脈圧が上昇しても、静脈小根を因子とする上腕動脈の伸展性および伝達機能がさほど変化しないため、伝達方式は高血圧発症時に中心圧力から末梢圧力を生成する有効な方式です。

アテローム性動脈硬化(Atherosclerosis)


冠動脈疾患を発症したか、アテローム性動脈硬化のその他の兆候がある患者についての動脈硬化度の上昇を説明した研究は数多くあります。これらの研究、そして多くの機会があるにもかかわらず、動脈圧力波に基づいてアテローム性動脈硬化の重症度測定ができておらず、前向き研究において他の研究者がこの測定を成し遂げた例はないと考えられます。患者の大動脈脈波伝播速度と全身性のアテローム性動脈硬化との明確な違いを示すことができず、これをアテローム性動脈硬化のスクリーニング検査として提案することもできません。この可能性を研究してきた他の研究者も同様です。大動脈脈波伝播速度に関する当社の結果はアテローム性動脈硬化の有病率の高低にかかわらずほとんど同じです。

アテローム性動脈硬化は大動脈を硬化させ、初期の波反射の一因となるはずです。動脈硬化の測定指標、またはそのような指標の変化に非常に敏感な動脈拍動の輪郭にほとんど影響を及ぼさないのは驚きです。

糖尿病(Diabetes Mellitus)


糖尿病が動脈硬化を増加させると言われてきましたが、脈波輪郭の測定も大動脈硬化の測定も糖尿病の診断には役立ちません。同様に、これらの測定が疾患の程度を評価に役立つと証明されていません。糖尿病患者(1型と2型の両方)における大動脈の脈波増大の増加が大動脈硬化度の上昇と相関があることが研究で報告されています。ただし、老化と高血圧の作用がアテローム性動脈硬化および糖尿病における大動脈硬化および脈波輪郭の変化をもたらす主因と考えられます。

早発の大動脈変性(Premature Aortic Degeneration)


年齢または動脈圧値について正常値よりも著しく高い大動脈増大を示す患者に巡り合うことは珍しいことではありません。一般にこれらの異常な所見は、健康であっても家族歴に血管疾患がある中年女性に見られます。被験者の中には55歳以前に脳血管イベントを示す人いますが、これは非定型発症です。リスクのある被験者をさらに試験する必要がありますが、早発の心臓血管イベントは最終的にMahomedの以前主張のように「脈拍を見ればその人がわかる」をいつかは証明するかもしれません。

心不全(Heart Failure)


脈波分析は心不全を予測するスクリーニング過程で特に便利です。LV 機能障害時にはカルシウムの再摂取速度が遅いために駆出時間が延長することが認められています。この作用は左心室肥大と伴に観察されることが少なくありません。この観察結果は心不全被験者の拡張期左心室機能障害の診断を行うために使用されてきました。また拡張期LV機能障害と収縮期LV機能障害を区別する際にも役立ちます。

収縮期LV機能障害を発症すると、圧力流量に著しい影響を及ぼす早発の波反射の結果、駆出時間が短縮されます。この作用は収縮期心不全時の重拍脈の存在、駆出時間の短縮、最小限の中心圧力波増大や全く中心圧力波増大なし、および拡張期の明白な波反射といったことをもたらします。この手法は、収縮期機能障害と拡張期機能障害の区別、および機能障害の重症度の測定に使用されます。ニトログリセリンは波反射の削減、心拍出量とLV駆出時間の増加、およびLV負荷の軽減を介しての測定値を補強するために使用します。

薬物の効果(Effects Of Drugs)


PWVシステムは脈波分析を介して血管拡張薬のプラス効果についての洞察を与えます。この効果は動脈圧の従来のカフ法では明らかにならなかったことでもあります。例えば、上行大動脈とLV収縮期血圧の低下は第2収縮期波の振幅が減少した結果です。橈骨動脈で発生するこの現象は、一部がLV負荷の低下による、抗狭心症薬の効果を示しています。PWVシステムは大動脈圧拍動を使用して血管拡張薬の効果を定量化する場合と同じ結論を得ます。この方法を使うことで、心室‐血管相互作用の他の例を容易に入手でき、橈骨圧力波の収縮期の第2隆起を識別することができます。

血管拡張薬の身体への効果についての観察は波反射の変化によって説明されます。ニトログリセリン投与の結果、中心大動脈および左心室における収縮期血圧の低下にかかわらず、末梢収縮期血圧が保持されると考えられます。この効果は血管拡張薬が従来の想定よりも劇的な効果を心臓にもたらすことを示唆します(従来の方法での観察に基づく)。ニトログリセリン点滴中に上行大動脈圧波を橈骨から生じさせることができ、上腕伝送機能は最小限度しか変更されないので血管拡張が上肢と下半身に対してより著しい効果をもたらしたと結論できます。

合成された大動脈拍動は狭心症、高血圧および心不全の治療の治療効果の追跡に頻繁に使用されます。薬物療法の主な目標は心室と血管の相互作用の最適化、反射波、大動脈増大、大動脈およびLV収縮期血圧の低下させることです。血管拡張薬は波反射を短縮することによって駆出期を延長し、結果として一回拍出量を増加させます。このようにして収縮期不全時の大動脈脈波波形の駆出時間が短縮します。

駆出時間の比率が延長される現象は頸動脈、橈骨および大動脈の脈拍で観察されます。駆出時間がどれだけ延長されるかは、心不全の程度に直接関連しています。大動脈流の波形は大動脈流で観察されたように、初期の波反射によって起こされる有害作用の指標として日本で使用されています。同時に血管拡張薬がいかに順調に波反射を減少させるのかを実証するためにも使用されます。

さらに脈波分析はニトログリセリンの細動脈および末梢抵抗を研究できる可能性を示しています。ニトログリセリンの有効性は導管動脈を拡張させ、波反射を低下させることにあります。硝酸エステルをシルデナフィル(バイアグラ)と併用した際の現在の推奨投与量は慎重に検討されていますが、その理由は、これらの制約が脈波分析をすることなく制定されたからです。むしろ、これらの推奨は併用する投与量が投与された際に血圧が劇的に低下した試験群に基づいて行われました。

独立した研究では、シルデナフィルと硝酸エステルを組み合わせると重大な反応が生じることが示唆されています。シルデナフィルがニトログリセリンの効果を意図した結果の最大2倍まで高め、この効果を8時間も延長したことが研究で示されました。PWV システムは脈波分析を使用して、この薬物相互作用を安全に追跡および監視し、ニトログリセリンの滴定を容易にします(シルデナフィル投与後に必要な場合)。

動脈圧拍動は薬物の抱える潜在的なマイナス効果についての洞察を与えます。これによってb-アドレナリン受容体遮断薬が一般的に駆出時間および波反射の増加をもたらすことが分かります。まれですが、場合によっては、これらの薬物が大動脈および LV収縮期血圧の上昇を起こすだけでなく、中央の脈波増大を増加させる場合があります。一般に、b-アドレナリン受容体遮断薬がもたらすプラス効果は、徐脈を伴う拡張期と収縮期の継続時間が不均衡に増加した結果です。

硝酸エステルとは異なり、カルシウムチャネル拮抗薬は血管拡張を介して大動脈収縮期血圧増大を低下させます。この望ましい効果は心不全がなくても拡張期期間を短縮し、駆出時間を延長する可能性によって相殺されます。冠灌流の時間を短縮することによって、狭心症になる場合があります(特に同時に頻脈が発生する場合)。

この現象は短時間作用型のジヒドロピリジンによる狭心症および心筋虚血の根本原因となる場合があります。