はじめに



心拍変動 (HRV)


心拍変動 (HRV) または心拍間隔変動には、心臓の正常なリズムを調節する多くの生理学的因子が正確かつ忠実に反映されています。実際、HRV は交感神経と副交感神経という 2 つの自律神経系 (ANS) の相互作用を観察するための強力な手段となっています。

HRV は、多くの臨床疾患 (糖尿病、高血圧、甲状腺機能亢進症、白血病、様々な種類の腫瘍性疾患など) の進行度を判断する際にも非常に有用です。このため、HRV は現代医学におけるもっとも優れた診断手段のひとつと見なされ、利用される機会も増えてきています。この診断手段を、環境的・専門的な側面を勘案して実際に利用するためには、ソフトウェアとハードウェアによる支援が必要です。VitalScan 製品は、こうした理論的・臨床的な研究を、患者のモニタリングおよび追跡、評価に用いる実績ある手法に応用することによって生み出されました。

HRV は、この 30 年の間に、慢性疾患、罹患率、死亡率、老化に関連する健康リスクの予測指標として大きな注目を集めるようになりました。現在の医学界では、HRV を Nonspecific Adaptation Deficit (NAD: 非特異的適応異常) のもっとも信頼性の高い指標のひとつと見なすことが一般化しています。

NAD について


Nonspecific Adaptation Deficit (NAD: 非特異的適応異常) という概念は、教授・医師でもあるスヴェトスラフ・ダネフ医学博士と、同博士と協力関係にある医療チームの医師らによって、共同で考案および開発されたものです。その概念に従えば、生命にかかわる病気には、何らかの非特異的な変化が前兆として伴っています。そうした変化としては、たとえば体外または体内環境の好ましくない変化に適応する能力の減退が挙げられます。適応の要求は高まっているにも関わらずその能力が低下しているために、致命的な病気に罹患するか死に至るしか脱却する手段がない悪循環に陥ってしまいます。NAD という概念は、生理学的な視点から見ると、基本的な生命過程の調節/制御センターとして主要な役割を果たしている脊髄神経の異常によって生じた活動効率の低下に基づくものです。

自律神経系 (ANS)


自律神経系は広範囲にわたっており、あらゆる器官系の機能に関わっています。自律神経機能障害の臨床症状は、事実上すべての疾患で観察されています。脳に影響がある構造的な病理学的過程は、感染性、退行性、腫瘍性、遺伝性のいずれであっても、自律神経症候群を誘発する可能性があります。

近年、ANS/HRV は、環境汚染、食生活の問題、心理社会的苦痛、様々な行動障害といった広範囲にわたるストレス要因の悪影響に関する評価に利用されるようになっています。VitalScan モニタリングは、短期的 HRV 自律神経 (ANS) 分析のための、またパルス流/自律神経機能試験の実施・評価のための基準および数学的手続きに従って開発されています。

脈波速度 (PWV)


脈波は、血液循環中に動脈系で観察される、測定可能な生理現象です。心収縮中には、特定の血液量が駆出されます。それによって脈波が、一部の駆出血液量の運動エネルギーと一部の伸びきった弾性のある血管壁の位置エネルギーが相互に変換されることによって、動脈全体に伝播していきます。伝播していく脈波全体で、圧力および血流、速度、血液プロフィールの変化を観察することができます。脈波は、動脈弾性の分類に利用できます。

小動脈と大動脈の状態は、心血管関連疾患の予防および診断にとって重要です。特に、主幹動脈の硬化と脈波増大は、心臓発作、心不全、動脈硬化、腎臓合併症などの健康問題リスクが生じていることを示す明確な兆候です。PWV (脈波伝播速度) 分析と動脈硬化指標 (EEI、DDI、DEI) は、該当する症状や臨床兆候が現れるよりもずっと前に適切な治療を開始する時期を決定する手段として、医療専門家に利用されることがあります。

年齢と収縮期血圧には、PWV との強い相関が認められます。実際、中膜石灰化と血管弾性が不足すると動脈硬化のリスクが高まるため、PWV の上昇を促進するもっとも重要な要素は年齢であるとされています。脈波伝播速度を測定することは、老化および血管障害、血管拡張/収縮剤が動脈に及ぼす影響に関する研究に役立ちます。

VitalScan の脈波伝播速度測定機能は、動脈の硬度および脈波増大を定量化する際に便利です。PWV によって、心血管の健康、疾患進行の管理、薬剤/治療/ライフスタイル/食習慣の影響に関する有益な洞察を得ることができます。