心拍変動解析


心拍変動 (HRV) は、心拍の変化を表す尺度です。通例、ECG トレースまたは動脈圧トレースから、連続する心拍間隔を分析することによって算出されます。

心拍変動解析には様々な方法が提案されていますが、それらは時間領域解析、周波数領域解析、非線形解析の 3 つに大別することができます。HRV は、循環機能の自律調節活動を表す指標とされています。また、自律神経系活動のもっとも確実な解析手法とされています。HRV の変化 (多くの場合、減少) は、高血圧、出血性ショック、敗血症性ショックといった様々な病的状態と関連があることが報告されています。急性心筋梗塞後の死亡率の予測因子としても利用されています。

時間領域解析


時間領域解析のわかりやすい例は、心拍間隔の標準偏差 (SDNN) を算出することです。その他の時間領域解析としては、連続した心拍間隔の差の二乗平均平方根 (rMSSD)、NN50 (または差が 50ms 以内の連続した心拍間隔の数)、pNN50 (または差が 50ms 以内の連続した心拍間隔の総数の割合) などがあります。SDNN には全体的な変動との強い相互関係が、rMSSD には心拍関係の副交感神経活動との関連が認められます。

周波数領域解析


一般的な周波数領域解析は、離散フーリエ変換 (別称、高速フーリエ変換) を心拍間隔時系列に応用したものです。これにより、様々な周波数の変動量が示されます。ヒトについて定義されている主要な周波数帯域は、次のとおりです。

高周波数帯域 (HF): 0.15~0.4Hz。HF の契機は呼吸です。 HF は、主に迷走神経活性または副交感神経系から生じると考えられています。

低周波数帯域 (LF): 0.04~0.15Hz。LF は、交感神経活性から生じます。 圧受容器のループ遅延が表出したものであるという仮説が立てられています。この遅延によって、交感神経系はサイクリック AMP (cAMP) 系というセカンド メッセンジャー系を利用することができます。

超低周波数帯域 (VLF): 0.0033~0.04Hz。VLF の起源は定かではありませんが、生体内系の熱調節から生じるのではないかと考えられています。

この数年の間に、HRV は予防医学を含む現代医学のあらゆる分野で大きな注目を集めるようになりました。この新しいトレンドを生み出した人たちのひとりが、スヴェトスラフ・ダネフ医学博士 (教授・医師) です。 ダネフ博士は、HRV の好ましくない変化が、癌腫症 (癌が全身に拡がった状態) を含む数多くの生命にかかわる病気の予測因子として利用できることを証明しました。この結論は、コホートの調査およびモニタリングを長年にわたって実施した結果導き出されたものです。

HRV は、交感神経と副交感神経 (迷走神経) という 2 つの自律神経系のバランスをもっとも直接的に反映するため、「自律神経平衡」という重要な生体定数が新たに考案される契機となりました。この定数は、予防医学だけでなく、その他の医学分野でも広く応用されています。

数学的な観点から見た場合、HRV は心拍活動の規則性を表していると考えられます。 つまり、この規則性が顕著になればなるほど心拍変動は減少し、その逆もまた同様である、ということです。心拍変動は、有酸素期間 (RR 間隔) と呼ばれ、ミリ秒 (ms) を単位とする、連続する 2 つの心拍間の経過時間の差から求められます。有酸素期間は、ECG 信号 (下図参照) から取得されます。

ECG

ECG は心電図のことで、QRS コンプレックスは心拍を、R-R 1 と R-R 2 は有酸素期間を表しています。

交感神経活性 (緊張) が増大すると HRV は減少します (その逆もまた成立します)。 また、副交感神経活性が増大すると、HRV は増大します。

HRV パラメータと他の基礎的な臨床・臨床関連の研究/調査の間には、統計的に重要な相関関係が存在することが発見されています。これにより、VitalScan による検査および特定の臨床的、実験的、生理学的、心理学的な検査の結果には、重要な関連性があることが証明されました。なかでも VitalScan の場合は、情報伝達性が高く、実際の適用/実施がより簡単であるというメリットがあるという点で、他とは区別されます。

HRV では、主要なリスク要因であるストレスおよびトレーニングの質的/数的レベルが測定されます。 つまり、HRV は未確認の非特異的な健康リスクを (疾患が進行する前に) 特定するための指標であって、正確な診断に寄与するものではありません。健康リスク レベルが (数か月以上の期間を経て) 慢性的に増大した場合、疾患が重篤化することがあります。様々な医学分野で、HRV 適用の信頼性を扱った多数の科学研究論文/報告が提出されています (セクション「医療分野別に見た ANS/HRV」を参照)。